Glacier Express, Switzerland

乗車日:July 31, August 02 & 03, 2000





Glacier Express・氷河急行は
マッターホルンの観光基地Zermattと、
高級リゾートのSt. MolitzやDavosの間を
結ぶ観光用列車です。

スイスを代表する観光地を結び、
また氷河や雪を抱いたアルプスが望める
沿線の風景の美しさもあいまって、
人気の高い列車です。

列車の走行距離は289.4km。
所要時間は8時間あまり。
評定速度30kmちょっとと、
のんびり走る列車です。


運行形態はちょっと複雑になっていて、
2000年の時刻表では、夏の間は、
Zermatt - St. Moritz間が2.5往復。
Zermatt - Davos間が2往復あり、
このうち一往復がZermatt - Chur間を
併結で運転しています。
またZermatt - Diesentis間に
片道分の列車が設定されていて、
あわせると、列車本数の最も多い、
Zermatt - Diesentis間で一日3往復となります。




この氷河急行は3つの私鉄に
またがって運行されています。

ZermattからBrig間が
BVZツエルマット鉄道

BrigからAngelmattを通りDisentis間でが
フルカ・オーバーアルプ鉄道 (FO)

そしてDiesentisからSt. Moritzが
レーティッシェ鉄道 (RhB)です。

では、ZermattからSt. Moritzまでの
乗車記を各鉄道会社毎に案内しましょう。



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BVZツエルマット鉄道
Zermatt - Brig





氷河急行の片方の起点Zermatt。
いわずと知れたマッターホルンの麓の町です。

氷河急行の乗車記となると、列車の始発
Zermattから始めるべきでしょうが、
実際にはZermattに向かう時に初めて乗った
Brigから乗車記を始め様と思います。


ユングフラウ観光を終えた後、
Interlaken OstからSpiezに出て
Loetschenpassを長いトンネルで越え、
Brigの駅に着きました。

Brigで氷河急行に乗り換えです。

通路を歩き駅舎を抜けて駅前広場に出ます。
BVZツエルマット鉄道の乗り場は
Brige駅の駅前広場にあるのです。



列車に乗るのに駅前広場に出るというと
ちょっと変な感じがするのですが、
BVZツエルマット鉄道の列車は
軌間1000mと小ぶりなので、
駅前から路面電車に乗る
といった風情でもあります。

Zermatt行き12:23の列車は、
5両編成で、乗車率はざっと5割ほど。
赤に白い帯の車体が鮮やかです。


標高672mのBrigから1605mのZermattを結ぶ
BVZ Zermatt-Bahnは営業キロ44km、
そのうち8.9kmがラックレール区間で、
最大勾配は125パーミルに達するそうです。

1892年7月にZermattまでの全線が開通し、
通年の営業は40年後の1933年からです。
いかに冬の気候が厳しいかわかります。


定刻に発車し、ローヌの広い谷を走ります。
ここは先程Brigに向かう途中谷の上からの
眺望を楽しんだところです。

Interlaken OstからBrigまでの乗車記は
こちらです。

進行右手の高い位置に見えるのは、
Lausanne方面へのスイス国鉄の線路で
BVZ鉄道を見下ろしているようです。

次のVispではそのLausanne方面からの
乗り換え客が大勢乗込みほぼ満席となり発車。
発車してすぐ左に大きくカーブを切り
フィスパ川に沿ってZermattを目指します。

しばらく走ると石積の橋をくぐります。
ここがノイブリュックという小さな町で、
白い教会と石積の橋それに赤い列車という
組み合わせが絵になるのですが、
写真を撮り損ねてしまいました。


氷河に取り囲まれた様な町という
Saas Feeへの下車駅Staldenを過ぎ、
谷が深くなりました。
川底が進行左手の遥かかなたにあり、
右側の座席からでは立ちあがっても
川底を見届けることが出来ません。

やがてKalpetranに停車しました。



深い谷間にある小さな駅ですが、
駅舎は花で綺麗に飾られていて、
いかにもスイスらしい感じです。


谷が次第に浅くなるとSt. Niklaus。
この駅を出ると川を渡り右に川が添います。
川を渡る時、Brunnegghornの
白い頂きが遠くに見えました。



やがて谷間に大きな岩が
点在しているのが見えてきました。
その大きな岩に寄り添うように
農家が建っていたりします。

まるで土砂崩れにでも遭った様ですが、
これらの巨岩はその昔氷河に
運ばれたものだそうです。


深く切り刻まれた谷から
谷が広がり、牧草地の生い茂り、
教会や小さな集落が点在する
のどかな景色へと変わりました。



谷の向こうにクライネ・マッターホルンと
ブライトホルンの姿が見えてきました。

進行左手には標高4545mのDomをはじめ
4000mを超える山々があるのですが、
車窓からは確認出来ませんでした。

やがて進行右手に、山肌の緑が切り裂かれ、
瓦礫の山が車窓間近に迫ってきました。
1991年に起きた山崩れの跡です。
膨大な量の岩が崩れ落ちてきていて、
自然の威力をまざまざと見せ付けてくれます。

そしてこの山崩れのすぐ左手に、
氷河の末端が見え、その向うに
雪を抱いた山が見えてきました。



この氷河がビス氷河で氷河急行から
一番近くに眺められる氷河だそうです。
そして雪を抱いた三角錐の山が、
Weisshorn (ヴァイス・ホルン)4505mです。


Weisshornの山頂をちらっと見届けると、
Taeschの駅に着きました。
Zermattの手前最後の停車駅です。

Zermattへは自動車の乗り入れが
禁止されているので、駅前には
広大な駐車場が確保してあります。
観光バスの乗客もここで
BVZに乗り換えです。

このあたりからはクライネ・マッターホルンも
かなり間近に見えるようになりました。



谷が再び狭くなり、いよいよZermattです。
Zermattに到着する寸前、車窓右手に
チラッとマッターホルンが見えました。


Zermattの様子は こちらを参照下さい。
またZermattからGornergrat間での
GGB (Gornergrat-Bahn)の乗車記は こちらです。




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フルカ・オーバーアルプ鉄道 (FO)
Brig - Angelmatt - Disentis





1) Brig - Fiesch

Zermattで2泊し、SunneggaやGornergratで
マッターホルンの雄大な景色を楽しんだ後、
氷河急行でSt. Moritzに向かいました。

今日(Aug. 02, 2000)の行程はZermattから
2時間ほどのFieschまでです。


Zermatt滞在中は良く晴れた天気も
この日は既に下り坂の様子で、
雲が空一面に広がってきました。

Zermatt 10:10発の氷河急行D列車は
定刻に、音もなくZermattの駅を発車しました。


3日前の景色をビデオを巻き戻すように
車窓を眺めるうち、Brig着。

ここからいよいよフルカ・
オーバーアルプ鉄道に入ります。

このBrigでは時刻表を見ると13分程
停車することになっているので、
ホームに降りようとしたのですが、
例の車掌さんが手で制止しました。

何故だろうと思って座席に着くと、
発車時刻前なのに列車が動き出しました。
これにはちょっとびっくりしていたら、
構内の外れで一旦停車し、
今度は逆戻りしだしました。

どうやらBrigで車両の一部を切り離したり、
増結したりしている様です。

こういった車両運用は今では
あまり見られなくなっていて、
ちょっと、びっくりしました。


11:46。今度は時刻表通りに発車です。
このBrigで進行方向が逆になりました。

僕の席はBrigからは進行方向左側。
地図で見ると右の車窓に沿って川が流れ、
景色もそちらの方が良さそうなのですが、
右側には空いたボックス席がありません。

それで仕方なくデッキに行くことにしました。
この氷河急行の2等車に使われている車両は、
デッキに荷物を置くスペースがあり、
そこの窓が開閉式になっているのです。

窓を開けると、谷を渡る涼しい風と共に、
川の流れが間近に見ることが出来ました。



このRhone川も氷河から流れ出した川で、
白く濁った水が迸る様に流れていきます。


列車は川を渡りBrigから20分程で
Grengiolsの駅を通過しました。
この駅では速度を落とし、
ゆっくりと通過します。

ここからラック・レールの
区間が始まるのです。
この駅を出ると、ラック・レールで
急勾配を上りながら、ループ線となります。

Grengiolsの駅の前に立ちはだかる
山の山腹の、かなり高いところに
これから走る線路が見えています。

ラック区間とループが重なった
区間は珍しいそうです。
列車は川を再び渡るとトンネルに入り、
左カーブを切りながら勾配を上ります。

そしてトンネルを出ると車窓右遥か下に、
先程通った線路が見えました。




谷底が深くなりました。
その谷底が次第に浅くなると
Fieschに到着です。

ここで一泊し、アレッチ氷河を見学しました。

Fieschの様子は、
こちらです。



2) Fiesch - Andermatt

Fieschで一泊した後、
Andermattに向かいました。

今日も曇っていて、天気が心配です。

乗車した列車は、9:58発です。
この列車は氷河急行ではなく
フルカ・オーバーアルプ鉄道の普通列車で、
Andrmattまでの14駅すべてに停車していきます。


Fieschの町を出ると、Fiesch川を渡り、
大きくΩ状のカーブを曲がりました。

しばらく、谷あいを走ります。
このあたりはゴムス地方と呼ばれ、
牧草地の薄い緑と、針葉樹の
組み合わせが目に鮮やかです。

途中、Covred Bridgeを見かけました。



車窓は鄙びた、のどかな
田園風景が続きます。
このゴムス地方の中心地、
Muensterの街を過ぎました。

このあたりは牧場と針葉樹の景色に
時折、集落があらわれるだけで、
車窓風景は変化に乏しくなっています。

Muensterを出てしばらくすると、
広い構内のOberwaldの駅に着きました。

このOberwaldからRealpまでの区間には
標高2431mのFurka Passがあるのですが、
15.4kmのフルカベイシス・トンネルで
結んでいて、このトンネル区間で、
列車で自動車の運搬をしているのです。

この自動車の運搬は峠が雪で閉ざされる
冬の間は大活躍するのでしょうが、
夏は開店休業状態の様で、
観光バスが一台、車運搬用の
貨車に載っているだけでした。

Oberwaldの駅を出ると、緑の谷間に、
白い教会を囲む小さな集落が現れました。




その後、トンネルに入りました。
このフルカベイシス・トンネルが
開通したのは1981年だそうです。

それ以前は、ラック式で急勾配を上りながら、
フルカ峠を超えていたそうですが、
Gletch氷河が間近に見られたそうです。


長いトンネルを抜けると、
Andermattまでは僅かです。
カーブしながら煉瓦橋を渡りました。



Andermattに着く直前に、
天気が次第に悪くなり、
ガスがかかってきてしまいました。


3) Andermatt - Goeschenen

Andermattでは約30分の
乗り継ぎ時間があります。
この乗り継ぎ時間を利用して、
Goeschenenまで行ってきました。

GoeschenenはAlt-Goldauを通り、
St.Gotthard Passをトンネルで抜け、
Milanに向かうスイス国鉄の
主要幹線との接続駅です。


St.Gotthard Passの乗車記は
こちらです。


そして、Goeschenenまでの区間に
悪魔の橋という、切り立った
狭い渓谷に架かる橋を
眺めることが出来るのです。


Andermattを発車してまもなく、
ミルクの様な霧に囲まれ、
白一色の景色となってしまいました。

列車は、ラックレールの区間を
速度を落として、ゆっくり走ります。

渓谷を渡ったのですが、
ここが悪魔の橋なのでしょうか?



この写真はGoeschenenからの帰途、
霧の僅かな晴れ間に撮ったものです。


急勾配を下り、霧が晴れたと思ったら、
Goeschenenに到着するところでした。



さすがに幹線らしく、駅の構内に
長編成の貨物列車が停まっていました。



4) Andermatt - Disentis

Andermattからは11:50発の
Glacier Express Bで
St. Mortzに向かいました。

定刻より少々遅れて、霧の中から
氷河急行が現れました。

このGlacier Express Bは全車両一等車で、
しかも新しいパノラマ・カーで
編成されているのです。



このAndermattからDisentisにかけては、
氷河急行の路線の中でも最も景色の
いい区間ということだったので、
珍しく一等車を奮発したのですが、
この霧では車窓風景は絶望的です。

Andermattを発車してすぐ、
食堂車に向かいました。
食堂車だけは昔乍らの車両です。



この食堂車でワインを飲んだのですが、
TVや雑誌でおなじみの傾いた
ワイン・グラスは出てきませんでした。


相変わらず深い霧です。
晴れていれば、Andermattある
ヴァセレン谷が一望のもとに
見渡せる筈なのですが、
この霧ではどうにもなりません。

急勾配を上りつめたところが、
標高2033mのOveralp passです。
霧が少し上がってきました。

Overalp湖のほとりの景色です。



そしてトンネルを抜けると、
深い谷を見下ろしながら
勾配を下っていきます。

あたりは夕暮れの様に暗く、
道路を走る車もヘッド
ライトを点けていました。



暗くて良く判らなかったのですが、
このあたりの進行右手の山間に、
小さなトマ湖という湖があるのですが、
この湖があのライン川の
源泉なのだそうです。

小雨に煙る景色を眺めながらの
食事が終わったら、列車は
レーティッシェ鉄道との接続駅、
Diesentisに到着するところでした。



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レーティッシェ鉄道 (RhB)
Diesentis - Chur - St. Moritz




1) Diesentis - Chur

Diesentisで20分程停車したのち、
ゆっくりとSt. Moritzに向けて発車しました。
Diesentisからはスイス最大の私鉄、
レーティッシェ鉄道 (RhB)の路線となります。

Diesentisからしばらくは、
のどかな渓谷沿いを走るので、
車窓風景は少々平凡です。




これは、パノラマ・カーの様子です。
車両の側面から天井にかけて、
大きなガラスがはめられていて、
素晴らしい視界が楽しめます。

ただ、今日の様な天気では、
窓ガラスに水滴がついたりして
外の景色はあまりよく見えません。

特に車窓風景を写真に撮る時には、
窓ガラスに反射してしまうので、
一等車でも窓が開く旧型の
車両の方が良い様に思います。

車窓風景が少々変化に
乏しくなってきたので、
列車の最後尾に行って、
流れ去るレールを眺めていました。

列車は針葉樹の林や牧草地を縫い、
そしてトンネルを抜けて走っています。




Diesentisから40分程のIlanzからは、
ライン川の渓谷が深まります。
白い肌が剥き出しになった石灰岩が
狭い谷の両脇に現れていました。

この地形は氷河期の末期に、
氷河の末端が崩壊し、大規模な山崩れを
引き起こした為に出来たのだそうです。


再び谷が広がり、川幅の広がったライン川を
立派な鉄橋で渡ると、Reinchenauです。

右手の高い位置から線路が寄り添って来ます。
この線路がSt. Moritz方面のレールで、
Reinchenauは接続駅となっています。

この列車は、Churまで足を延ばします。
カントン・グラウヴュンデンの首都で、
スイス国鉄とも接続しています。
小さな集落が点在するだけの、
谷あいを長い時間走ってきた後では、
活気のある大きな都市のように感じました。


2) Chur - St. Moritz

Churで二等車を何両か増結し、
進行方向を変えて発車です。

Reinchenauまで5分程来た道を戻り、
Diesentisからの線路がライン川を渡る
鉄橋を見下ろしながら進行方向を南に変え、
Rhein Post川の作る谷を走ります。


しばらく走ると、進行左手に谷が開け、
なだらかな起伏が連なっています。
この谷には数々の古城が現れます。

深く切れ込んだRhein Post川を渡ると、
この地方の中心Thusisです。

ここから支流のAbula川の谷へと進み、
谷は狭まり、時折現れる集落も、
こじんまりとしたものとなります。



これはTiefencastelという、
山間の小さな集落です。

"この山深い里に住む人たちは、
何を生業にしているのだろう..."
ふとそんな事が頭をよぎりました。


しばらくAbula川に沿って走るうち、
前方右手に針葉樹を頭に載せた、
大きな岩山が見えてきました。
一瞬、石積の橋が岩山に、
突き刺さっている様に見えました。

これが氷河急行の沿線でも特に有名な
ランドヴァッサー橋です。

列車が右にカーブを切ると、
前方の車両が石積の橋を渡って
行くのが見渡すことが出来ます。
谷に躍り出るように橋を渡りました。




このランドヴァッサー橋を渡るとすぐに
Davos方面との接続駅、Fillsurです。

ところで、このレーティッシェ鉄道は
ZermattからのBVZ ツェルマット鉄道や、
フルカ・オーバーアルプ鉄道と異なり、
ラック式レールを採用していません。

この為、レーティッシェ鉄道には、
急勾配を克服する為に多くの
ループ線を採用しています。

Fillsurを出てすぐに一つループを越え、
その後ループが連続する区間になります。



ループを一段上がる度に眼下に
今通って来たばかりのレールが
緑の野原に光っていて、
鉄道模型のレイアウトの様です。



ループの途中から針葉樹の
林の中を走るようになりました。
益々ループ線の全容が掴みにくくなり、
その後列車は長いトンネルに入りました。

全長5864kmのアルブラトンネルです。
このトンネルは最も標高の高い位置で
アルプスを越えているということです。


トンネルを出ると、チャンパグラの
広々とした谷に出ます。



氷河急行の終着駅St. Moritzはもうすぐです。


終着のSt. Moritzの様子は こちらです。

またSt. Moritzから乗車した
ベルニナ線の乗車記は こちらです。




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