Gotthard Pass (Milan - Alt Goldau)

乗車日:July 26, 1998, Jan. 01, 2000


ヨーロッパを南北に分けるアルプス。
4000m級の山々が連なるこのアルプスは、
まさにヨーロッパの屋根です。
マッターホルンやモンブランなどの
山々が連なり、多くの観光客を集めています。



鉄道にとって、このアルプスは
ヨーロッパ最大の難所ですが、
20世紀の初めには既に3つのルートが
確保されていたそうです。

一番西側が、スイス中部のベルンから
ブリークを通りミラノに抜ける
レッチュベルクシンプロン・パス。
このルートは途中に永らく世界最長を誇った
シンプロントンネルがあって、
一番おなじみのルートかも知れません。

中央にあるのが、チューリッヒから南下し、
ミラノに至る、ゴッタール・パス。
そして一番東側のルートが、
オーストリアのインスブルックから、
イタリアのヴェローナに抜ける
ブレンナー・パスです。

僕の住んでいるFrankfurtからイタリアに行く場合は、
中央のゴッタール・パスが便利です。
ここは、1998年の夏、スイスのリギに行った後、
Alt GoldauからMilanoに抜けた時と、
1999年末にイタリアの観光旅行した際に通りました。
リギの様子は、 こちらです。
イタリア観光旅行の様子は、
ローマ ヴァチカン フィレンツェ ミラノ
編を参照下さい。


1999年末にイタリア旅行を終え、
2000年元旦の朝、Milan Central駅に向かいました。
空気は澄み、空は綺麗に晴れ上がっています。
アルプスで素晴らしい景色に巡りあえるかもしれません。



ミラノ中央駅は壮大で、まるで宮殿の様です。
ヨーロッパ随一の駅舎と言われているそうです。


9:25発のHamburg-Altna行き EC 8列車
"Tiziano"で帰路に就きました。
この列車はMilanを出た後、Gotthard Passを超え、
ルツルン、バーゼルを通り、ライン川沿いを遡り、
途中ケルンからルール工業地帯を抜け
ハンブルグへ向かうのです。

走行距離約 1330km、所要時間14時間59分。
評定速度は約 89km/Hrと山岳地帯を走り抜ける
列車としては、そこそこのスピードです。

イタリアからドイツ北部まで丸一日かけて走る
堂々たる国際特急なのですが、出発ホームは
広いミラノ中央駅の外れ2番線からの発車。
ホームは閑散としていて、編成も僅か6両でした。
車両は白に、幅広い赤い帯びという
おなじみのドイツ鉄道の車両でした。

隣のホームにジュネーブを通りパリに向かう
TGVが停車していました。




例によって音もなく静かに発車。
車内は空いていて、3割ほどの乗車率でしょうか。
ミラノの市街を抜け40分程でComoです。
アルプスの前衛の山々や湖が現われ、
急にリゾートの雰囲気が漂います。
何組かのグループ客がここで下車して、
車内は一気に寂しくなりました。

Comoは国境の街でトンネルを抜けると、もうスイス。
スイスでの最初の停車駅Chiassoで15分程の停車です。
Chiasso停車中にパスポートコントロールがありました。
EU加盟国同士では既に国境通過時の
パスポートコントロールは廃止されていますが、
スイスはEUに加盟国ではないので、今だに
パスポートコントロールが残っているのです。
このChiasso停車中に何両か増結し、
10両を超える編成となりました。


Chiassoを出てしばらく走ると、
再び湖が姿を表し、Luganoです。



このLuganoも夏の間避暑地として賑う街です。
Luganoを出ると、勾配を登り峠を越えます。
トンネルを抜けると雪を抱いたアルプスを背景に、
雄大な谷が広がっていました。



その昔、氷河が削り取った谷底で、
ノルウェーで見た車窓風景と良く似ています。
トリノへ通じる線路が延びていました。


勾配を下り、谷底に下りるとBellinzona。
このBellinzonaから本格的なアルプス越えが始まります。

Bellinzonaから約50km離れたゴッダルド・トンネルの間に
900mもの標高差があり、この標高差を稼ぐために、
この区間だけで、4箇所ものループ線があるそうです。
Ticino川のつくる狭い谷に沿って勾配を登って行きます。

右に左に、雪をかぶった山々が見え、
小さな教会や集落が現れ、過ぎ去って行きます。
車内が空いているので、自由に席を移って、
この素晴らしい景色を堪能していました。

やがて、列車は右に大きくカーブを切り始めました。
ループ線に差し掛かったのです。
列車は山の中腹をトンネルで抜け、
360°弧を描きながら高度を稼ぎ、
今通ってきた線路をオーバークロスしていきます。



この写真は1998年7月の時のものです。

谷の下に複線の線路が見えました。
まるで鉄道模型のレイアウトを見ている様で、
僕のような鉄道好きには堪えられない景色です。


ループを過ぎると、左右の車窓に
雪を抱いたアルプスの雄大な景色が広がります。


いよいよSt.Gotthardpassです。
St. Gotthardpassは標高2108mの峠ですが、
列車ではとてもこの高さまで登れないので、
全長15kmのトンネルで抜けるのです。
山が屏風のように立ちはだかると、
列車は警笛を鳴らしながら、
トンネルへと入って行きました。
ゴッダルド・トンネルに入ったのでした。

このゴッダルド・トンネルの上には、
標高1436mの所にAndermattという街があり、
この街を通り、東西に線路が敷かれています。
スイスの私鉄RhBレーティッシュ鉄道です。
有名な氷河急行はここを走っているそうです。
いつかはこの列車にも乗ってみたいと思います。



ゴッダルド・トンネルを抜けた直後のアルプスの雄姿


分水嶺を抜け、今度は勾配を下って行きます。
アルプスの南側ほど急ではありませんが、
それでもAlt Goldauまでの約40km余りで、
700m近く下るのです。

ゴッダルド・トンネルを出て、すぐのところに、
今度は雄大なヘアピン・カーブを通ります。

小高い丘に建つ教会を中心とした小さな集落が
車窓右手の深く切れ込んだ谷に見下ろせます。
Wassenという町です。
レールを軋ませながら右にカーブを切り、
トンネルを抜けると、教会が左の車窓に現われます。
教会の位置が列車とほぼ同じ高さです。
遠く、雪を抱いたGross Windgaellen山が見えます。



再び左カーブのトンネルを抜けると、
今度は教会が見上げる位置に現われました。

ヘアピンの後、もう一度ループを抜けると、
勾配が緩くなり、湖が現われました。
フィーアヴァルトシュテッテ湖です。
イタリア側では、雲ひとつない程の快晴でしたが、
峠を越えたスイスではどんよりと雲に覆われています。



この湖も氷河で削りとられた谷間に広がり、
入り組んだ形をしています。

この湖はリギ・カルトバートから、
ベルナー・アルプス方面を望むと、
その手前に広がっている湖です。
リギ・カルトバルトの様子は、 こちらです。

ここまで来ると、Alt Goldauの街はもうすぐです。



鉄道旅行へのいざない - Europe編- に戻る