Bernina Line, Switzerland

乗車日:August 04, 2000





ベルニナ線はSt. Moritzから
イタリアのTiranoを結ぶ
レーティッシェ鉄道(RhB)の路線です。

標高4000mを越えるベルニナ・
アルプスを越える山岳鉄道で、
ラック式を採用していないこともあり、
雄大な景色を堪能出来ます。


2000年8月4日。冷たい雨が降る日、
ベルニナ線に乗りに出かけました。
普段なら雨に左右されない鉄道旅行ですが、
景色の綺麗なベルニナ線では、恨めしい雨です。

乗ったのは09:05発の普通列車です。
10両の長い編成でした。

沢山の団体旅行客が乗り込んでいましたが、
僕の車両は空いていて、向かい合わせの
ボックス席3列分が全部開いていました。
これで、少々の雨でも気兼ねせずに
窓を開けて写真を撮る事が出来ます。

St. Moritzの駅を発車してすぐに、
Chur方面の氷河急行の路線と別れ、
しばらく走ると、広い谷間を走ります。
車窓に石造りの古城が現れてきました。



Schlarinaのサン・ジアン教会です。
丘の端に立つ教会の屋根は焼け落ちていて、
まるで古城の様です。


Samedan方面への接続駅Pontresinaを過ぎると、
谷が狭まり、2つ目の森の中の駅、
Morteratschを出たところで、滝の脇を抜け、
勾配を登っていきます。



Flaz川が流れ落ちる滝は、
水量も多く、迫力がありました。


この滝を抜け勾配を登りると、
牧草地の広がる広い谷に出ました。

天気がよければここの登りで、Diapolexxa氷河と
ベルニナアルプスの主峰Piz Bernina (4049m)が
見られるそうですが、霞みがかかって見えませんでした。

標高が高い為に木々はもう見当たらず、
牧草地を右へ左へと走ります。
どことなく荒涼とした景色は、
地球の果てを行くといった感じです。

やがて、湖のほとりを走る様になりました。
このあたりはOspizio Berninaで、標高2046m
一般鉄道としては、ヨーロッパで最高地点だそうです。
対岸の山の谷間には舌状に氷河が現れています。

あまりの車窓の景色の素晴らしさに、
多くの人が写真を撮っている様です。




湖を抜けしばらく走ると、Alp Gruemです。
先ほどの湖が黒海と地中海を分けるサミットで、
列車はここから勾配を下っていきます。



石積みの洒落た感じのAlp Gruemの駅舎の向うには、
切り裂かれた深い谷間に落ち込むように、
Palue氷河が見えています。

数百メートルも下の谷底には小さな池があり、
氷河から流れ出た川がその池に注いでいるのが見えます。
霞んではいますが、息を呑むような眺めです。



列車はここからヘアピン・カーブを何度も曲がり、
その池のレベルまで下がっていきました。
やがて白樺の木の平地となりました。

この景色は高原の景色そのものですが、
急勾配を下りた後に高原の様な風景に出会う
というのもちょっと不思議な感じがします。


ここからしばらく森林地帯となり、
狭い谷を抜けていきました。
煉瓦を積んだアーチ型の橋を渡る列車。
なかなか絵になる車窓風景です。




この森林地帯を抜けると、
雲のはるか下に平野が現れました。
スイスのイタリア語圏の中心地
Poschiavoの町のあたりです。



それにしてもこのスケールの大きさはどうでしょうか。
再び、九十九折れのペアピンカーブを何度も通り、
Poschiavoの町に下りてきました。

谷間の平地を単調に下り、Poschiavo湖の
ほとりのリゾート、Le Preseを過ぎます。
スイスもかなり奥まったこの地なのですが、
立派なリゾートホテルがあって、
思わず途中下車したくなってしまいました。


そして、Brusioの駅を過ぎると、
ベルニナ線最後の見所に差し掛かりました。
珍しいオープン・ループ線です。

ループ線は世界中どこでも見られるのですが、
大方のループ線は、トンネルの中にあるので、
ループ線を通っているのかどうか、
はっきりしない事も多いのです。

しかし、ここではトンネルがないので、
ループの構造がよくわかります。

谷の底が低くなったかと思うと、
行く手にいくつものアーチを連ねた煉瓦橋が
狭い平地にぐるっと輪を描いています。
まるで鉄道模型のレイアウトを眺めている様です。



このループ線を過ぎるとイタリアとの国境もすぐです。
国境を越え、狭い街中を路面電車のように道路上を走ると、
終点Tiranoの駅に到着です。

St. Moritzから普通列車でも僅か2時間半の汽車旅。
この2時間半でいくつもの氷河を眺められ、
ベルニナ・アルプスやPoschiavoの雄大な景色等
眺められるベルニナ線の車窓風景は、
スイスの鉄道旅行でも一番でした。

いつかまた、天気のいい時に、
是非乗ってみたいと思っています。



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