下館駅にて
(at Shimodate Station)
2010年2月6日、下館の町を散策し、
下館城跡を訪れた後、下館駅に向かいました。
下館の散策記はこちらです。
下館城の登城記はこちらです。
下館駅は、JR水戸線と関東鉄道そして
真岡鐵道が接続する鉄道の要衝駅です。
関東鉄道の乗車記はこちらです。
1937年(昭和12年)に改築された
駅舎は風格が漂っていました。
下館駅に向かうかなり手前から、
機関車の息吹が感じられていました。
それは真岡鐵道が1994年(平成6年)から
運行を開始した「SLもおか」を牽引する
C12蒸気機関車のドラフト音です。
真岡鐵道は、ローカル線で活躍していたC11とC12の
二両の蒸気機関車を保有し、ほぼ毎週末に下館から
終着の茂木まで、臨時列車「SLもおか」を運行しています。
下館駅の真岡鐵道のホームに急ぐと、3両の
客車を牽引したC12が側線で待機していました。
蒸気機関車に気を取られていると、
ディーゼルカーが発車していきました。
これは、真岡鐵道の定期列車です。
定期列車が発車してしばらくすると、C12は
汽笛一声、蒸気を吐いてゆっくり走りだしました。
汽笛の音が心に沁みます。
SL列車は駅構内の外れまで進み、その後、
後退運転で、真岡鐵道用の1番線に入線しました。
ホームに到着すると、蒸気機関車の
周りにはさっそく人だかりが出来ました。
ホームに停車中の蒸気機関車の
機関室を覗く事が出来ました。
機関室にはパイプやレバーが沢山あり、
人の手で機械を動かしていると実感できます。
勿論、缶には石炭がくべられています。
そろそろ発車時間が近づき、車内に入りました。
C12に牽引される客車は、
JR東日本から譲り受けた50系客車です。
この車両がデビューした時には、それまでの重厚な
旧型客車に比べると、なんだか安っぽい車両に
思えたのですが、登場してから30年以上の時が経ち、
この50系も風格が漂う様になっています。
車内には沿線の名物のいちごの飾り付けがなされていますが
ホームの人だかりに反して、空席が目立っていました。
上の写真は「SLもおか」に乗車する前、
下館城を散策しに出かけた際に乗車した
ディーゼルカーから撮ったものです。
JR水戸線の線路が、車窓左手に
ゆっくり遠ざかって行きます。
右にカーブを切って北に進むと
下館の街の西側を走っていきます。
帰りの「SLもおか」からの様子です。
下館二高前を過ぎ、下館の集落が途切れ
田圃が広がる景色になりました。
時折、汽笛が聞こえ蒸気が車窓を流れていきます。
この日は冬型の天気で、下館では一面の青空でした。
最初の停車駅・折本駅に到着しました。
ここで上りの普通列車と交換しました。
停車中は、電車やディーゼル車とは異なり、
蒸気機関車の息吹以外の音は聞こえて来ません。
それも、蒸気機関車の魅力です。
折本を発車すると、しばらく国道294号線と並走し
やがて再びのどかな田園風景となりました。
流れゆく蒸気の煙がなんとも言えません。
この区間での帰りの列車の最後尾からの眺めです。
真っ直ぐに伸びる線路の脇に立つ、
冬枯れのケヤキの大木です。
関東平野で、ケヤキの大木を良く
見かけますが、これも好きな光景です。
樋口を過ぎ、進行方向右手に丘陵地が見えてきました。
久下田の手前のこの丘陵地は、藤原魚名が
781年(宝亀12年または天応元年)に築いた
上館、中館、下館の3つの館のうち、
上館跡にあたります。
この丘陵地のすぐ先が久下田駅です。
久下田も行き違い設備のある駅で
単線の線路が分岐しています。
ホームも長く立派な駅で、国鉄時代には
長編成の列車が運行されていた事でしょう。
久下田を発車し、再びのどかな
田園風景の中を走ります。
車窓を流れる蒸気の白い煙が
長閑さを一層引き立てています。
遠くに筑波山も見えていました。
そして寺内駅に停車しました。
寺内駅も風格ある駅です。
旧型客車かと思える茶色の塗装の50系の
客車が、この寺内駅に停車している様子は、
30年以上前に戻ったような雰囲気です。
沿線には、「SLもおか」の様子を撮影する
人達の姿も見えていました。
帰り道に、最後尾の車両から、
同じところを通った様子を写してみました。
田圃の脇を、真っ直ぐに線路が伸びています。
この場所なら、遮るものがなくいので、
力走する蒸気機関車の様子を写せるでしょう。
こうして下館から16.4kmの距離を
30分程かけて、真岡に到着しました。
真岡は真岡線の中心駅で、
真岡鐵道の本社も置かれています。
1997年に完成した駅舎は、
蒸気機関車を模した形になっています。
この真岡では5分程停車します。
この停車時間を利用して、「SLもおか」を
牽引するC12を眺めに行ってきました。
多くの乗客が車外に出て、蒸気機関車の
周りに集まっていました。
進行方向右手の車窓には、
雑木林の陰に残雪が見えていました。
真岡から8分程で、西田井駅に到着しました。
真岡鐵道の駅はどの駅も国鉄時代の
趣を残す、堂々とした駅です。
この西田井にも交換設備が遺され
上りの普通列車と行き違いしました。
行き違いの列車を待つ間に、
再び先頭のC12の写真を撮りました。
日常の生活の中では、こうした列車の
行き違いはまだるっこしいものですが、
SL列車では愉しみに変わります。
次の北山駅の様子です。
この駅も、ホームが長く立派な駅でした。
北山を発車し、小貝川を渡ります。
小貝川を渡り、左に大きくカーブし
再び北に向かって進みます。
やがて益子駅に到着しました。
真岡を発車し、約20分程です。
この写真は帰路に列車の
最後尾から撮ったものです。
益子焼で有名なこの益子駅も
真岡鐵道の中心駅の一つです。
「SLもおか」の乗客の多くは真岡で下車し
この益子でも下車する人が多く、益子から
先は、車内は寂しくなってしまいました。
車窓は、引き続き、広々とした田園地帯です。
車窓を横切る煙の量が多くなっているようです。
下館を発車した時には青空が広がっていましたが
いつしかどんよりとした雲が空一面を覆っています。
益子の次の停車駅は七井です。
七井を発車した頃から雪が舞い始めました。
雪で景色が白く霞んでいました。
次の多田羅を出ると、沿線の
雪の量も多くなってきました。
雪が降る中、市塙駅に到着しました。
七井やこの市塙も列車交換が可能な駅です。
乗車人員が減少し、列車本数が少なくなり
列車交換設備を廃止する鉄道が多いのですが、
真岡鐵道では比較的多くの設備が残っています。
ちなみに真岡鐵道の真岡 - 茂木間の
運行本数は一日あたり23本です。
真岡鐵道の路線は人の動きと一致していないと
言われていますが、地方ローカル線としては
まずまずの運行本数が確保されています。
市塙を出ると、雪の降り方が激しくなってきました。
そんな中でも、多くの人がカメラを構えていました。
思わぬ雪の中を走るSLの
シーンになった事と思います。
市塙を出ると、真岡鐵道は鬼怒川水系と
那珂川水系の平地との間の
丘陵地へと分け入って行きます。
汽笛が近くで木霊する様に響きます。
雪の降り方も益々激しくなり、
一気に雪国の景色となっていきます。
勾配区間となり、蒸気機関車の
息遣いも荒くなっていました。
下館駅で「SLもおか」に乗車した際には
このような雪景色を見る事になるとは
想像もしていませんでした。
人家も少ない丘陵地を過ぎると、
並走する国道123号線に
「道の駅もてぎ」が見えてきました。
雪深い山間から抜け出てきた後に眺めると、
ちょっと特異な光景にも思いました
この辺りから、人家が広がりました。
真岡や益子を過ぎると車内は空いていましたが
ホームではSLを出迎える人もいて、
C12の周囲は再び人だかりになっていました。
茂木駅の駅名標です。
一つ手前の天矢場駅の名前が手書きですが、
天矢場駅は1992年に開業した新設駅です。
茂木駅では、ホームの先頭で線路に下りる事が出来ます。
到着したC12の写真を撮っていると、
汽笛一声の後、C12が激しく蒸気を吐きました。
さすがにすごい迫力です。
C12は、この後交代運転し、下館駅側の
駅構内の外れまで戻って行きました。
そこから、側線へと進んできました。
この先に転車台があり、「SLもおか」を
牽引してきたC12の方向転換を行いました。
この転車台は1996年に新設されたものです。
それまでは、茂木からの帰路は「SLもおか」の
蒸気機関車はバック運転を余儀なくされていましたが、
それ以降は帰り道も前向きで客車を牽引していきます。
茂木駅の駅舎です。
国鉄時代の駅舎から改築されています。
駅では、お茶のサービスもありました。
この後、茂木城址を訪れ、下館への
帰り道も「SLもおか」に乗車しました。
帰路に乗った「SLもおか」です。
茂木に来た際に降っていた雪も上がっていました。
上りの「SLもおか」には見送りする人も少なく
ひっそりと発車しました。
列車の最後尾から去りゆく茂木駅を眺めていました。