鳥居峠は太平洋に流れ込む木曽川と、
やがては信濃川となり日本海に注ぐ
奈良井川との分水嶺の峠です。
旧中山道の薮原宿と奈良井宿の間の鳥居峠は
木曽路きっての難所と言われたそうです。
2001年秋、この鳥居峠をハイキングしました。
もう紅葉は終わっていたのですが、
秋晴れのいい天気でした。
薮原の宿を過ぎ、坂道を登っていくと、
峠道の入り口に差し掛かります。
大きな案内板が立てられていて、
地図が無くても安心して峠越え出来そうです。
この日は秋晴れのいい天気で、冬枯れの
ポプラの葉が空の青さに映えていました。
落ち葉で埋まった山道を登って行きます。
周囲の雑木林が深くて、
馬籠峠の道に比べると、鳥居峠の方が、
野趣に富むと言うか山深い感じがします。
道端に庚申塚。
当時から多くの旅人の安全を祈っていたんでしょうね。
やがて石畳の急坂となり、九十九折れに登って行きます。
ところどころに熊避けの鈴が置いてあります。
いつ熊が出てもおかしく無いような感じです。
みるみる標高が高くなり先ほどの薮原宿が眼下に見えました。
旧中山道から左にそれ急坂を上がると、
森林観測所の跡に出ます。
今は休憩所の様に整備されています。
急な山道を登って来たのでここで小休止。
白樺の林の中の静かなところです。
この休憩所のすぐを下って旧中山道に戻ると
小高い丘の下に「硯水」の碑がありました。
山の清水が湧き出ているのですが、
木曽義仲のいわれがある清水です。
硯水から丘の上に階段が続いていて、
この先は御嶽遥拝所です。
手前の山並みの向うに、少し雪を抱いた
御嶽山の山頂部分が顔を覗かせています。
その昔、旅人達もこの階段をのぼり、
御嶽山に向かって旅の安全を祈ったのでしょうか。
この御嶽遥拝所には神社があり、
この神社の鳥居が鳥居峠の名前の由来だそうです。
ここからは、もう坂もなだらかになりました。
周囲の山々を眺めながら、歩を進めると、
再び御嶽山が見えてきました。
旧国道と合流し、切り通しを抜けると、
奈良井の街並みを見下ろす高台に出ました。
山間にひっそりと佇む奈良井宿。
その向うには遠く山並みが続いています。
方角からすると、美ヶ原か霧が峰でしょうか?
旧国道と分かれ再び細い山道に分け入ります。
鳥居峠付近から栃の大木が自生しています。
太い幹から細い枝が幾つも映えていて、
ちょっと不思議な木の形です。
この辺りは山間の坂道を淡々と下っていく感じです。
寂しい山間に峰の茶屋跡の小屋が見えてきました。
この辺りの沢は、戦国時代、戦に負けた武士の亡骸を
葬ったところだそうです。
薄暗い沢には未だに成仏していない
武士の魂が漂っている様な感じでした。
短い冬の日が既に傾きはじめ、
旧中山道の山道を斜めに照らし始めています。
再び石畳を歩くようになると、
奈良井宿ももうすぐです。
薮原宿から7km程の山歩き。
約3時間の楽しいハイキングでした。