Coast Starlight (Los Angeles - San Jose)


乗車日:Aug. 09, 1997




Coast Starlight号は、南はLos Angelesを起点に
太平洋西海岸を北上し、Seattleまで走る
AMTRAKの看板列車の一つです。
車両は2階建てのスーパーライナー、
寝台車にラウンジカー、食堂車が付いた
豪華な編成で走ります。

走行距離1389mile (2222km)、
所要時間35時間余りです。
北行きはLos Angelesを9:30amに出て、
Oaklandに8:57pm着。
Sacramentoには深夜の12:10am着。
Seattleには翌日の8:45pm着です。

南行きは、9:45amにSeattleを出て、
Oaklandに翌朝9:15am着。
終着Los Angelesには9:15pm着のダイヤです。
ちなみにダイヤは1998秋・冬ダイヤです。
現在のダイヤは こちら で確認して下さい。

北行き・南行きともCaliforniaとOregen州境で
夜を過ごし、昼間はWashington・Oregon州および
OaklandとLos Angelesの間を走る様になっています。

Washington・Oregon州ではCascade山脈の景観が、
California州のOaklandとLos Angelesの間では、
太平洋の景観が楽しめるようなダイヤになっています。

なかでもSanta BarbaraからSan Luis Obispoの間、
120mileは殆んど人跡未踏の海岸線を走る
AMTRAKでも有数の景観を誇る区間です。


僕はSan Diegoの出張の帰り、
San DiegoからSan Joseまで
Cost Starlight号に乗りました。

この区間なら、朝San Diegoを出て
夜遅くない時間にSan Joseに着き、
しかも太平洋沿岸の景色を楽しむ事が出来ます。
しかも当時は、San DiegoとLos Angelesの間を走る
San Diegansのコーチ車両の一部が
Los AngelesでCost Starlightに連結され、
San DiegoからSeattleまで走っていたのです。


1997年8月9日。
San Diegoから乗ったSon Diegansは
定刻8:35amにLos Angelsに到着しました。
San Diegansは こちらです。


Coast Starlight号の発車する9:30amまで、
小一時間程時間があります。

この間に列車を抜け出して、
Los Angeles Union Stationの
駅舎の様子を見に行きました。



スペイン風の美しい駅舎です。
竣工は1939年。
既に鉄道が斜陽になりかかっていた時期で、
この美しい駅舎が活躍していた期間は、
僅かな期間だったと思います。

実際に駅を歩いてみると、
駅舎の中には思ったより多くの人がいて、
かなり賑わいを戻しているようです。
一つにはSan Diegansの乗客が増えている事、
それにLA近郊の通勤線MetroLinkの乗客や、
5年ほど前に開通した、地下鉄Red Line線が
このUnion Stationに乗り入れている為だと思います。


列車に戻って、発車時間を待ったのですが、
列車は定刻を過ぎても発車しません。

アナウンスによると、このCoast Starlightは
遅れているChicagoからのSouthwest Chiefを
待っているとの事です。
Southwest Chiefの到着時間は8:45amですが、
Chicagoからの大陸横断鉄道に乗った後、
更に列車を乗り継いで、
太平洋を北上する人もいるんですね。
さすがの僕も驚きました。

結局Southwest Chiefは2時間近く遅れ、
このCoast Starlight号も、
一時間以上遅れて発車しました。

Southwest Chief号の様子は、こちらです。


Los Angeles Union Stationは
行き止まり式の構造で、
San Diegoから到着した時と
逆の方向に走り出しました。
そして、しばらく徐行し、駅構外で
Los Angeles川を渡ったところで、
再度進行方向を変えて北に向かいました。

どうでもいい事ですが、Los Angelsを出た後、
進行方向を変えるかどうかは、
とても気になっていたのです。
というのも、これから太平洋岸を走る時
座った席の方に海が見えるか、
通路越しに海を見ないといけないか、
が違ってくるからです。
幸い予想通り、2度進行方向を変えたので、
太平洋の景色を充分楽しめます。

当時野茂選手が活躍していた、
ロサンジェルス・ドジャースの
Home Ground、ドジャースタジアムを
小高い丘の上に見ながら、
列車はLos Angelesの街を後にしました。

Los Angelesの街を過ぎると、
列車は勾配を登り、峠を越えるようになります。
赤茶けた岩がゴツゴツしている所を通ります。
Simi Valley越えです。思わぬ険しい勾配で、
いくつもトンネルを越えて行きました。




Simi Valleyを過ぎると、穀倉地が広がる
平原を行き、やがて海岸線を走り、
Santa Babaraに着きました。
Los Angelesから約100mile
2時間半の道のりです。
街中に椰子やソテツの木が立っていて、
いかにも南国風の街並みでした。

Santa Babaraでは遅れていたのですが、
10分程の小休止。
みんなホームに出て体をほぐします。
愛煙家はタバコを取り出し、一服です。

Santa Babaraを出たところで、
食堂車に向かいました。
もう一時過ぎ。お腹もだいぶ空きました。

しばらく前から食堂車の案内放送があり、
予約を取る旨の案内があった筈なのですが、
コンパートメントの乗客が優先されるのか、
コーチの方へはなかなか予約をとりにこず、
行き当たりばったりで食堂車に向かったのでした。

食堂車でウェーターの人に「予約がないのですが...」
と伝えると、「こちらへ来い」という望外な返事。
たまたま1人分の席が空いていたようで、
女の人と学生のカップルと相席となりました。

アメリカ人のいい所は、見ず知らずの人同士でも、
すぐ打ち解けて会話が弾むことで、
おかげで楽しい昼食となりました。
女の人はなんとシアトルまでコーチで、
若いカップルはSacramentoまで行くそうです。

女の人は、何度もこのCoast Starlightに
乗ったことがあるらしく、
この列車は素晴らしいと誉めていました。


食事を終え席に戻ると
列車は海岸線を走っていました。
所々僅かに木々が生い茂るだけの
荒涼とした海岸線が続く、
自然無垢とした景色の中を
列車が走っています。





道路も見当たらず、この景色を見るには
AMTRAKに乗る以外にはなさそうです。
しかもこの景色が120mile以上、
2時間以上も延々と続くのです。
雄大な海岸線を堪能出来ました。


隣の席の人が、久しぶりに席に戻ってきて、
「イルカが泳いでいたのが見えたけど、
ちゃんと見たか?」と聞いてきました。

彼はLAの手前のAnaheimから乗って来ました。
小さい子供を二人連れ、San Jose迄帰るそうですが、
何度もこの列車に乗ったことがあるらしく、
Santa Babaraからの景色は素晴らしいから、と
ラウンジカーに行くことを薦めてくれていたのです。

自分の席からでも充分景色が楽しめたので、
ラウンジカーには行かなかったのですが、
僕がイルカが泳いでいるのを見過ごしたと知ると、
いかにも残念そうな顔をしました。

彼が言うには、次のSan Luis Obispoを出ると
列車は急勾配を登り、そこも景色がいいから、
「今度こそ見逃すな」とまた教えてくれました。

San Luis Obispoでも10分程の休憩です。



San Luis Obispoは初めて聞く名前で、
鄙びた田舎の駅だろうと想像していたのですが、
ホームには大勢の人が溢れていました。
ここで降りる人も多く観光で賑わっている様です。


San Luis Obispoからは、急勾配となり、
今までとはうって変わって、
山間を行くようになります。
今度はラウンジカーで
景色を楽しむことにしました。

ヘアピンカーブで勾配を稼ぎます。
カーブがきついのか、機関車が
丁度窓の向うに見えています。
今通ったばかりの鉄橋がすぐ下に見下ろせます。



この後も列車は勾配を登り、
下から見下ろしていた山を
見下ろすような位置まで上ると、
トンネルに入りました。

このトンネルを過ぎると、列車は
Coast Rangesの平原を走ります。
赤茶けた台地に所々緑の耕地が広がるという、
典型的なカリフォルニアの景色が続きます。
車窓も単調になりました。
時折油田が現れたのですが、
車窓から油田を見たのは初めてでした。


次第に日が西に傾き、景色が
黄金色に染まってきました。
単調な景色が続くこの区間ですが、
日が傾いた時の景色は格別です。



ラウンジでこの景色をぼんやり眺めていました。

列車はこの後、自転車が軌道に投げ込まれるという
アクシデントに遭遇し、結局2時間以上遅れ、
San Joseには9時過ぎに着きました。

San Diegoから15時間。
最後はちょっと退屈しましたが、
人跡未踏といった感じの太平洋岸を行く
このCoast Starlight号はお薦めの列車です。
LAからならSan Franciscoまで、
時刻表どおりで、12時間。
これでもちょっと長すぎると言う方には、
San Franciscoを朝8時頃出て、
Santa Babaraまで乗車されることを薦めます。
Santa Babara着は6:17pmで、丁度いい時間です。



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