市川大門
Ichikawa Daimon, Japan







市川大門は甲府盆地の南、
笛吹川に沿った町です。

今は平成の市町村合併で
市川三郷町となっています。

静かな町ですが、ここは甲斐源氏発祥の地です。
古刹や江戸時代の陣屋跡もあり、歴史豊かな町です。

2007年12月にこの町を散策してみました。




市川陣屋


身延線の電車を市川本町駅で下車し、
まずは駅に近い市川陣屋を目指しました。

身延線の乗車記はこちらです。


市川陣屋は江戸時代中頃の1765年(明和2年)に
駿府紺屋町陣屋の出張陣屋として
代官所が置かれた事が始まりです。



その後、1795年(寛政7年)には陣屋の
建て直しが行われ、本陣屋となりました。

案内板によると、1765年(明和2年)には3万石でしたが、
本陣屋になった後の文化年間(1804年〜1817年)には
7万4千石、274もの村を支配していたようです。



明治以降は郡役所となり、
役場と学校に使われていたそうですが、
今ではこの正門が残るのみです。

住宅地に建つ陣屋門からは、江戸時代後期には
この地がこの周辺の中心地だったということは
とても想像できませんでした。




宝寿院


市川陣屋を訪れた後、
宝寿院に向かいました。

市川本町駅までの道を引き返し、
駅の東側の踏切を渡り、
急な坂道を登り始めたあたりに
宝寿院の山門がありました。



立派な山門です。
この宝寿院は真言宗のお寺で、
僧・行基が奈良時代初期に建立したそうです。

門をくぐり、坂道を登って境内に向かいます。



鐘楼としだれ桜の様子がなかなかでした。

鎌倉時代末期に夢窓国師親子が
伊勢からこの宝寿院に移り住み、
夢窓国師が9歳の時に、
ここで出家したそうです。

夢窓国師は鎌倉の円覚寺、建長寺で
首座を務めた名僧で、この甲斐の地では
武田信玄の菩提寺となる恵林寺を創建しています。

恵林寺のある塩山の様子はこちらです。

写真のしだれ桜は夢窓国師が
植えた木の6代目と伝えられています。

その奥にある本堂です。



本堂は新しくなっていたようですが、
庭園も夢窓国師が作ったと言われています。



台地の上にある宝寿院からは、
甲府盆地の様子を見渡す事が出来ました。



甲府盆地を取り囲む山々はやや霞み、
墓地の向こうに見える盆地の様子は
幻想的でさえありました。




熊野神社
(伝源義清公館跡)


宝寿院の次は熊野神社を目指しました。
熊野神社は、武田信玄へとつながる
甲斐源氏発祥の地とされています。

道がわからず、不安な気持ちで
住宅地を抜け、ブドウ畑が現れると、
遠くにそれらしい杜が現れホッとします。



熊野神社は小さな、神社でした。
赤い鳥居の奥にある本殿です。



江戸時代末期に建てられたと
推定されているようです。

この熊野神社は、甲斐源氏の基となった
源義清が守護神として祀ったのが
始まりとされているようです。

熊野神社の奥にある
「源義清公居館伝承地」の碑です。



碑の向こう側にあるのは、
クヌギの大木です。


源義清は新羅三郎義光の三男で
11世紀初めの人です。
源義清とその子義光は常陸の国、
勝田郡に土着し、武田氏を名乗っていたのですが、
1130年(大治5年)に周囲の豪族と衝突し、
甲斐に流されてきたそうです。

しかし、甲斐の肥沃な土地を治め、
八ヶ岳山麓の逸見荘へ進出し、
基盤を築いていったそうです。

三条実美公の揮毫による
「甲斐源氏旧跡碑」です。



源義清・義光が甲斐に流れて400年後、
武田信玄がこの地を治める事になるのです。




平塩寺跡


そろそろ身延線の電車の
時刻が気になってきましたが、
熊野神社から近くにある
平塩寺跡に向かうことにしました。



この平塩寺も僧行基の開基で、
735年(天平7年)に建立された古刹です。

細い通りに面した寺の
入り口の階段を上ると、
広々とした空き地が開けていました。



所々に木が生えていて、
高原の景色のようでした。

平塩寺はもともとは法相宗でしたが、
延暦年間(782年〜802年)に
天台宗に改宗したそうです。

寺の規模はかなり大きかったようですが、
1582年(天正10年)に武田氏が滅亡した際には
平塩寺も荒廃していたそうです。

その後、真言宗のお寺として復興したそうなので、
先ほど訪れた宝寿院はこの平塩寺の
別院の一つだったのでしょうか。

境内跡を歩いていくと、
小さな神社が建っていました。



緑の屋根の社殿と
狐の狛犬が印象的でした。

わずか40分あまりの駆け足の
市川大門の町の散策でしたが
いくつもの史跡を訪れることが出来ました。



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