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お城の城壁がホームの間近に迫る
福山から福塩線の電車に乗り換え、
10分ちょっとの神辺で下車しました。
この神辺が井原鉄道の終点です。
今日は終点の神辺から始点の
総社に向かって乗り通す予定です。
JRの改札を抜けて、すぐ隣の
井原鉄道の駅に向かいました。
ホームの片隅に、ポツンと一両の
ディーゼルカーが停まっています。
この日はとても暑い日でした。
外で待つのも汗をかくだけなので、
冷房の効いた無人の車内で
発車を待つことにしました。
発車時間は11:56です。
ところで、神辺は"かんなべ"と発音します。
以前、福塩線に乗ったのは、ほぼ20年前のことです。
以前乗車した時は、この神辺は素通りしたので、
どんなところか見当もつかなかったのですが、
かつての備後守護職の居城があったところで、
駅の近くにはその昔の本陣も残っているようです。
列車から見える小高い丘が、守護職の居城
神辺城の跡地のようです。
思わずこの神辺の街を散策したくなったのですが、
この先の井原と矢掛で途中下車することにしました。
井原はもちろん井原鉄道の中心の街、
そして矢掛は旧宿場町ということです。
神辺駅に置いてあった井原鉄道のパンフレットは、
沿線の見所が判りやすく載っていて、
僕のように列車に乗って沿線を歩く
人にはとても重宝する優れものでした。
そのパンフレットを眺めながら、
あれこれ行動の予定を立てているうちに
列車は定刻に発車しました。
三々五々人が乗り込んできて、
乗客は6名ほどです。
発車してすぐにJR福塩線と分かれ
右にカーブしました。
井原鉄道は1999年1月11日に開業した
比較的新しい鉄道です。
列車は鄙びた田園地帯を突っ切っている
立派な高架橋の上を走っています。
小型路線バスでも運べる程の乗客を乗せている
一両編成のディーゼルカーには、
鄙びた田園地帯を貫く立派な高架橋は
いかにも過剰投資のように思えます。
安全で快適な鉄道のウィークポイントは
踏み切りでの車との衝突事故です。
そこで1970年代以降に建設された鉄道は、
立派な高架橋やトンネルの連続で
踏み切りを殆んど無くして来ました。
人身事故をなくす為、踏切のない路線を
建設するという考えもわかるのですが、
それには巨額の建設費がかかります。
そして、その建設費は、鉄道会社が負担しなければなりません。
国のお金で建設される道路や空港を利用し、
その一部を利用費として支払っているバスや飛行機とは
かなりのハンデがあるように思います。
現在では新幹線や大都市での通勤新線でさえ、
巨額の建設費を償却しきれていない状況なので、
地方で新規に開業する路線はこの井原鉄道が
多分最後の路線になってしまうと思います。
新しい路線が開業しなければ、踏切事故は全く起こらないわけで、
踏み切り事故を減らす為の高架橋やトンネルの建設費増大が、
新線建設をストップしてしまっているとしたら、
とても皮肉なことだと思います。
そんな事をぼんやり思いながら
車窓の景色を眺めているうちに、
井原に到着しました。
ちなみに"いばら"と発音します。
井原は沿線の中心都市、井原市の玄関口なので、
敬意を表して途中下車をしました。
『岡山国体まであと777日』という看板が出ている
斬新なデザインの駅舎を出ると、
駅前の道路は綺麗に区画整理され、
真新しい住宅や商店がポツンぽつんと並んでいます。
いささか趣きに欠ける井原駅前ですが、
駅前のお寿司屋さんで軽く昼食を取ったあと、
次の列車までの間、街中をぶらぶら歩いていました。
街の東外れに小田川という小さな川が流れていて
その堤防まで行ってきました。
特に変哲のない小さな川ですが、
川の流れに佇んでいる白鷺の姿が印象的でした。
井原で一時間ほど小休止して、
再び井原鉄道の旅の再開です。
井原13:10発の総社行きに乗りました。
相変わらず乗客は少なく、7〜8人の乗車です。
発車してまもなくして小田川を渡り、
田圃の広がる景色の中を走っていきました。
とてものどかな景色です。
井原から13分で矢掛です。
この矢掛で再び途中下車です。
ここは、神辺駅で見つけたパンフレットで
目に付けていた街です。
矢掛(やかげ)は、旧山陽道の宿場町で、
国指定の旧本陣と旧脇本陣が残っているそうです。
全国でも国の史跡となっている、本陣・脇本陣が
今も残っているのは、この矢掛だけだそうです。
次の列車までの小一時間の間の慌しい町歩き。
駅にレンタサイクルがあったのを幸い、
真夏の様な陽射しが照りつける
暑い矢掛の町に繰り出しました。
これは矢掛駅の駅舎です。
宿場町を模した駅舎が町外れに
ポツンと建っていました。
矢掛での町歩きを終えて、
再び井原鉄道の旅を続けました。
矢掛を出て、トンネルを二つ程抜け、
隣の吉備町に入りました。
このあたりは吉備真備の出生の地だそうです。
吉備真備は遣唐使として唐の都長安を訪れ、
中国の文化を日本にもたらしたということは
歴史の時間に学んだことですが、
吉備真備の出生地がこのあたりとは知りませんでした。
沿線には吉備真備にまつわる史跡が何箇所かありました。
「吉備真備」駅という駅もあります。
この吉備真備でしばらく対向列車と交換しました。
吉備真備を過ぎると、次第に平地が広がり
田圃が広がってきました。
もう、JR伯備線との合流駅清音ももうすぐです。
清音からはJR伯備線の立派な線路を走り、
総社に到着です。
神辺から総社までの41.7kmの旅が終わりました。
思いがけなく、沿線の町歩きを楽しみ、
新しい発見の多い井原鉄道の旅でした。
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