Talgo from Granada to Madrid

乗車日:June 02, 2002





2002年5月末、ヨーロッパ出張の時に
連休を利用してスペインに行きました。
その際、グラナダからマドリッドまで
「タルゴ」に乗車しました。




「タルゴ」は、芋虫のように短い車両が連なり、
その車両の間に台車がある連接車という構造になっています。
フランスのTGVや小田急のロマンスカーも同じ構造です。

でもこの「タルゴ」は、線路のレールの幅が
違っていても走る事が出来るのです。
世界でも、こんな芸当が出来るのはこのタルゴだけです。

ヨーロッパの多くの国では、レールの間隔は1435mmです。
しかしスペイン国鉄の軌道幅は1668mmなので、
隣のフランスから乗り入れる車両は直通出来ず、
国境の駅で何時間も停車して台車の交換をしていました。

そこで特殊な構造の1軸の連接台車を採用し、
その走りながら二つの車輪の間を変えられるのだそうです。

近年になって、マドリッド - セビーリャ間にTGVタイプの
AVEがの走り始めたときに1435mmの標準軌を採用したので、
スペイン国内路線でもタルゴの軌間変更装置が
重宝されるようになったようです


6月2日の朝、グラナダのホテルを出て
街外れの駅に向かいました。

グラナダの様子はこちらです。

朝早いせいもあるのでしょうが、
ひっそりとした駅です



グラナダはアルファンブラ宮殿もある
世界的な観光都市なのですが、
列車の運行本数はマドリッド・バルセロナ・
セビリア方面から一日に3往復程度
づつの運行本数でしかありません。

駅に向かうタクシーの運転手も
"Stationへ"と頼んだら、
バスの駅か?と聞き直した程なので、
きっと鉄道の利用者は少ないのでしょう。


マドリッド行きは7時55分発です。
1等車3両、カフェカー1両そして
1等車5両の9両編成なのですが、
タルゴは車両長が短いので、通常の
列車でいうと4両編成程度の長さです。

定刻よりも少し遅れて発車。
一等車の予約を取ったのですが、
車内はかなり、空いていました。

この日は快晴。
グラナダの街を抜けると、
開けた原野の向こうに
丘陵が見えてきました。



雨の少ないアンダルシア地方の
赤茶けた地肌の丘陵です。

しばらく走ると、湖のほとりを抜け、
右手には逆光を浴びた山々が輝いていました。



トンネルを抜けIznallozという小さな集落を過ぎると、
再び車窓右手に雄大な景色が広がりました。

平原の向こうに連なる岩肌の剥き出しになった山脈。



実はグラナダからマドリッドへの列車は、
飛行機のチケットの都合で乗ることになったので、
景色とかはあまり期待していなかったのですが、
この様な雄大な景色に接することが出来て大満足です。


遠方の山脈が尽きると、今度は一面
180度の広大な原野が広がりました。

遥か遠くにポツンと丘が見えて、
まるでAMTRAKの車内から見た
アリゾナの景色を見ているようです。

やがて、原野の中から、細い2本のレールが現れ、
今走っているTALGOの線路に合流しました。

ALMERIAからの線路です。
原野の中から現れた線路の様子は
とっても絵になる景色だったのですが、
シャッターチャンスを逃してしまいました。。。

線路が合流してすぐにMoredaの駅です。
原野の中にポツンと建つ小さな乗換駅でした。


Moredaの駅を過ぎると、山岳路線となりました。
緩やかに起伏する背の低い木々がまだらに生い茂る山間を
右へ左へとカーブを切りながら上っていきます。




山塊の向こうに平原が広がっています。
山の頂を越えると、次の山塊が現れという感じで、
とても雄大な景色です。



途中、山あいに深い谷が見現われ、
鉄橋で広く深く切れ込んだ谷を越えました。



鉄橋からの眺めも凄かったのですが、
鉄橋を渡る手前では谷に面した崖っぷちを走り、
手に汗握るような景色でした。


荒野の中のMoreda駅から一時間半以上かけて
Linares-Baezaに到着しました。
架線を張った複線の立派なレールが現われ、
久しぶりに大きな駅に着いた感じがします。



このLinares-Baezaでは、30分程停車し、
Almeriaからの車両を増結しました。
空いた車内に、何人か乗車してきたのですが、
相変わらず席の大半は空いています。

停車中にホームに下りてみたのですが、
冷房の効いた車内から外に出ると、
ホームは照りつける太陽で炙られる様な暑さでした。

このLinares-BaezaはMadridからCordobaや
Sevillaに向かう路線の上にあります。
高速線を走るAVEが開通する前は、
メインルートだった路線です。

依然として山間を走るのですが、
山越えはなく川に沿って快調に走ります。

その後、牧草地と潅木が入り混じる
平原の景色となりました。
のどかでのびのびとした景色でした。



やがて、谷あいを走るようになり、
高速道路と並走するようになりました。
ゴツゴツとした岩肌がむき出しになっている
狭い谷間を抜けて行きました。




そろそろお昼が近づき、カフェカーに向かいました。
一歩、カフェカーに入ると、とても明るい雰囲気です。
窓ガラスがスモークガラスではないためでしょうか。

木目のカウンターが和やかな
雰囲気を醸し出しています。



カウンターには椅子はなく立ち席ですが、
明るい雰囲気が気に入って、食事を食べてからも
しばらく窓の景色を眺めていました。


いつしか車窓は広大な平原が続くようになりました。
時折集落が現われるようになりました。

時折、なだらかな起伏の丘の上に、
風車が現われるようになりました。



この風景がドンキホーテの世界なのでしょうか。



座席に戻り、単調な景色にウトウトするうちに、
急に人家が密集するようになりました。
マドリッドももうすぐです。

マドリッド・アトチャ駅に若干遅れて、
14:00頃到着しました。
グラナダから491km、6時間の列車の旅でした。
思わぬ雄大な景色に出会い、素晴らしい汽車旅でした。


その一方で、タルゴの旅はちょっと考えさせられました。
世界的な観光都市、グラナダとスペインの首都マドリッドを
結ぶ列車は、夜行列車を含めても3往復しかありません。

スピード遅く、本数の少ない鉄道は敬遠されて
自動車やバス等で移動する人が多いのではないでしょうか。

一般に、車窓風景の素晴らしい区間はスピードが遅く、
その為に、一般の乗客からは見向きもされず、
運転本数も少なく、乗車率も低くなってしまい、
鉄道としては衰退傾向にあるようです。

その一方で、高速で車窓風景も楽しめない列車には
便利さ故に、多くの乗客で混雑しています。
そんな鉄道旅行の矛盾を考えさせる様な
タルゴの旅でもありました。



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