Train Ride of "Carlo Goldoni from Vienna to Venice

乗車日:February 16, 2002






音楽の都・ウィーンから、水の都ヴェネチアまで、
アルプスを越えて8時間程で走る列車があります。
Carlo Goldoni号です。

ヨーロッパ出張の折り、運良く金曜日に
オーストリア、月曜日にイタリアという、
スケジュールになったので、
この機会にこの列車に
乗ってみることにしました。


ウィーンの街の様子は こちら
ヴェネチアの街の様子は こちらです。





ウィーンのホテルからタクシーを飛ばし、
ウィーン南駅に向かいました。

オーストリア第二の都市Grazに向かう列車や
イタリア・ブルガリア方面の国際列車が
発着するウィーンの南の玄関です。

ウィーン西駅に比べると、どことなく
煤けた感じがするのですが、駅舎は
天井も高く堂々とした造りです。

発車20分ほど前にホームに上がると、
Carlo Goldoni号は入線していました。
11両程の長い編成で、先頭側2両が一等車。
その後に食堂車と2等車が連結されています。

2等車の後ろには3両ほど車を運送する
貨物車が連結されています。
カートレインというのでしょうか、
車を列車で運搬し、運転者は客車で
のんびり過ごせる様になっているようです。


定刻から5分程遅れ、9:03に発車。
ウィーン市内を複雑な経路で抜けると、
丘陵地帯を走るようになりました。

葡萄畑が丘陵地に広がり、絵になる景色です。



いつもながら思うのですが、列車の中から
このような景色が過ぎ去るのを眺めるのは
本当に鉄道旅行の醍醐味と思います。


ウィーンから約30分程で、郊外の
新興都市Wien Neustadtを過ぎると、
平原に森林が広がり、やがて山が迫り、
谷あいを行く様になりました。
鄙びた寒村といった感じです。

行く手に雪を被った山々が見えて来ました。
谷あいを狭い沢に沿って走り、
やがて急カーブで沢を渡り、
180度方向を変えました。

先ほど進行方向に見えていた雪山が
後方に去って行きます。



列車は右に左にカーブしながら勾配を上り
進行左手に雄大な景色が展開してきました。
ウィーンでは晴れていたのに、
山岳地帯に入って空がどんより曇ってきました。


このあたりは標高1000m程の山塊が
列車の行く手をさえぎっています。
列車は山襞に沿ってカーブを繰り返しています。
時折狭い沢に沿って走ったかと思うと
180度の急カーブで方向を変え、
沢の対岸に渡ります。

石積みのアーチ型橋梁がいくつも現れました。

その間にも、勾配を上り続け、やがて
高い位置から山並みを見下ろす様になりました。



山々が複雑に入り組み、谷が深く切れ込んでいます。
遠くの山間に立つ宮殿が印象的でした。

サミットが近づき線路脇に雪が積もるようになりました。


Semmeringを過ぎサミットを越えると、
先ほどの雄大な景色から一転して、
Murz川に沿った谷を単調に下って行きます。



このあたりは北東から南西に
一直線に連なる山脈に沿って
谷が続き、その谷をMurz川が流れています。

小川のようなMurz川の流れが次第に太くなり
谷も広がると、Bruck a.d. Murです。

ここでMurz川と、谷の反対側から
流れてきたMur川が出合い、
南に流れを変えて行きます。

その渓谷を南にたどった先に
オーストリア第二の都市Grazがあり、
小さいながらも交通の要衝です。


Bruck a.d. Murを過ぎると、今度は
Mur川の流れを遡って行きます。

SalzburgやInnsbruckへ通じるレールが
分かれるSt. Michaelを過ぎると、
雪が深くなって来ました。



空もどんよりと曇っていて、
重苦しい冬の景色です。

列車はまとまった集落が現れる度に
こまめに停車するようになりました。


お昼が近づいたので、食堂車で
お昼を摂る事にしました。

車窓は雪景色が続いています。
雪景色をぼんやり眺めながら、
食堂車での食事と言うのも
なかなか趣があります。

いつしか列車は勾配をのぼり、
Mur川の谷を見下ろす様に走っていました。



このあたりで進行方向を南に変え
山塊を乗り越えて行きます。

人家も少なく、ますます寂しい
車窓風景となりました。

食事を終え、コンパートメントに戻って
ウトウトしかけてきたところで
車窓に特異な景色が現れました。



霧がかかって写真にはしっかり写っていないのですが、
険しい丘の上に、教会や修道院と思しき建物が立ち並び、
まるで地上のモン・サン・ミッシェルのような風景です。

山あいを抜け、スピードを上げ、森を駆け抜け、
湖のほとりを走り、Villachに到着しました。




Villachはオーストリア南部の主要都市です。
イタリア、スロベニアとの国境から
10数キロしか離れていない、国境の町です。

このVillachで15分程の停車です。



雪が深々と降り続いています。
長時間の停車なので、機関車の付け替えを
するのかと思っていたのですが、
接続列車を待って、発車しました。

接続の列車が遅れたので、
定刻より20分近く遅れての発車です。

オーストリア最後の停車駅なので
係官が乗り込んでパスポートのチェックです。
再び雪の森林地帯を走り、
険しい山あいを抜け、Villachから30分程で
Tarvisio Boscoverdeに到着です。

ここでオーストリア国鉄の機関車から
イタリア鉄道の機関車へと交換です。
係員が一人で機関車の付け替え
作業を黙々とこなしていました。


オーストリアからイタリア入ると、
険しいアルプスの基部を一気に
長いトンネルで抜けて行きました。

トンネルの合間から見る景色。



雪が深く、針葉樹の黒いが霞み、
水彩画のような景色です。


列車は遅れを取り戻す為、
かなりスピードを上げて走っています。

アルプスに源を発し、地中海に注ぐ
Tagliamento川に沿って南下し、
やがて平地が広がってきました。

アルプスが遠ざかるにつれ、
次第に天気も回復してきました。

車窓遠く、雪を抱いたアルプスの山々に
西日が当たり、ピンク色に輝いています。



遠くに輝くアルプスの山々に見とれるうちに、
終着駅、ヴェネチア・サンタルチアです。

ヴェネチア・メストレ駅を出ると、
海に突き出た築堤をゆっくり走ります。
前方に赤い屋根の家々が海の上に現れると、
終着、サンタルチア駅。

列車は10分程遅れて到着しました。




モノトーンの雪景色の車窓風景と比べると、
サンタルチア駅前はまるで絵画の様でした。



ウィーンから8時間、天気には
恵まれませんでしたが、
変化に富んだ汽車旅でした。



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